21世紀に入り、日本では大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済システムから脱却を目指し、
環境負荷を低減する循環型社会の構築が進展している。
その指標となる持続可能な開発目標(SDGs)は、上場企業のほぼ100%に認知されている(※1)。
一方で、市場の99%を占める中小企業における認識は1割に満たない(※2)。
果たして、日本全体で廃棄物に対する意識は変わってきているだろうか。以下、考察する。
※1 GPIF「2019年5月16日「第4回機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果」の公表について」
※2 関東経済産業局2018年12月 「中小企業のSDGs認知度・実態等調査」
大量廃棄が続くと、廃棄物最終処分場が枯渇する。一時は、埋立可能残余年数が2年を切る状況もあった。
その対応策は、廃棄物の発生を減らすか中間処理施設を増やすかの二択で、この30年で進んだのは後者であった。
つまり、排出事業者が排出量を抑制したわけではない。
廃棄物処理会社が循環的な利用(再使用、再生利用、熱回収)を推し進め、最終処分量の削減に大きく貢献した。
結果、最終処分量は年々減り、最終処分場の残余年数は約17年まで延びた。だが、これは課題を先延ばしたに過ぎない。
2018年1月に開始した中国の廃プラスチック輸入規制の影響を大きく受け、
廃棄物が国内で可能な処理量を超えて滞留する事態となった。
さらに2019年5月、環境省は企業が排出する廃プラの処理受け入れを自治体焼却施設に対して要請した。
しかし、自治体はそれを許容しなかったため、現状も問題は解決していない。
(写真出典: 環境省, 環境・循環型社会・ 生物多様性白書, 2019)
日本の法律(廃掃法第一章第三条)では、
事業者は廃棄物を自らの責任において処理しなければならず、
再生利用等を行うことによりその減量に努めるという大原則がある。
多くの事業者は自らの処理能力を保持していないため、
処理能力を持つ企業に「作業工程」(運搬・中間処理・再利用・最終処分)を委託する事が許されている。
だが、別の企業に廃棄物処理を委託する際、
排出事業者責任までも引き渡したような錯覚を生んでしまう。
これによって排出企業は処理責任の自覚が希薄になっているのではないか。
一方で、前述した通り廃棄物量は飽和している。
廃棄物処理会社は廃棄物の受入制限が必要となり、排出事業者を選別せざるを得なくなった。
廃棄物に対する責任や意識が低い事業者は自ずと選ばれにくくなり、
排出企業は廃棄物の排出事業者責任から逃れられない状況となっている。
事業者の廃棄物処理における責任範囲は、二つに分かれる。
一つは排出事業者の事業活動によって発生した廃棄物処理に対する自己責任の範囲、
二つ目は社会全体で発生した廃棄物処理に対する社会的責任の範囲である。
今後は、上記の間にあるサプライチェーン上にも処理責任の範囲が拡大されるべきである。
それによって、廃棄物処理の責任が企業の取引選定基準の一つとなり、
日本企業全体の廃棄物に対する意識改革につながるのではないか。
・ 残念ながら、日本企業全体では廃棄物に対する意識はさほど変わっていない。
・ 廃棄物処理の委託は、排出事業者責任に対する意識を下げることにもつながっている。
・ 廃棄物処理責任がサプライチェーン上にも拡大することが、日本企業全体の廃棄物処理に対する意識改革につながるのではないか。
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・ GPIF, 「第4回機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果」の公表について」, ,2019年5月16日
・ 関東経済産業局, 「中小企業のSDGs認知度・実態等調査」, 2018年12月
・ 環境省 環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書(https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/r01/html/hj19020301.html)
・ 電通報, 「 P&Gジャパン 再生海洋プラスチックをボトル原料にした「ジョイ」発売」, 2019年11月8日(https://dentsu-ho.com/articles/6976)
・ 西日本新聞, 「ユニ・チャーム、紙おむつ再生」, 2019年10月17日(https://www.nishinippon.co.jp/item/o/551941/)
・ 環境省 グリーン・バリューチェーンプラットフォーム( https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/supply_chain.html )
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