「間伐」という言葉の本来の意味や必要性を、林業関係者以外で正しく認識している人はどれほどいるだろうか。
森林の持続可能な管理は、砂漠化抑止・気候変動緩和・生物多様性保全等に不可欠である。
自身の林業に携わった経験から、「間伐」とSDGs目標15「森林の持続可能な管理」の現状と課題を考察する。
健全な森林を育てる為には、森林更新サイクルが必要だ。
日本では主に、植林→下草を刈る「下刈り」 →細くて育ちにくい木を伐る「除伐」
→成長に伴って混みすぎた木を間引く「間伐」 →成長した立派な木を伐る「皆伐」
→植林というサイクルが行われている。
その中でも健全な森林を育てる為に最も重要なのが「間伐」である。
間伐を行うと、山の中に日光が差込み、間伐していない残存木の成長が促進される。
成長し易い環境にある残りの木は、上に下にと成長していくことで、葉はより茂り二酸化炭素を吸収する作用が増加する。
地中の根も張り廻り土砂水害などに強い地面となる。
間伐などの適切な整備を行い健全な森林を育てる事は、
国土保全・水源涵養・温暖化防止・生物多様性保存など多くの環境保護に繋がるのである。
画像出典:林野庁「間伐等の推進について」
現在、戦後に植林された人工林が利用時期を迎えているにも関わらず、
皆伐されず間伐などの整備も行われない荒れた山が多数存在する。
健全な森林環境に必要な更新サイクルが正しく行われていないのである。
ではなぜ行われていないのか。それは主に2つの理由がある。
第1に木材の需要低下である。
バブル崩壊後、公共事業の減少により土木用材の需要は低下し、
併せて一戸建ての余剰から建築用材の需要も低下している。
第2に木材の価格低下である。
伐採に掛かる費用は1㎥当たり約8,000円に対して、
販売価格は建築用材などで約13,000円前後、
間伐材などの低質材は約3,000円である。
山全体で考えると費用過多で赤字となり、このしわ寄せは森林所有者や林業事業者に及んでいる。
この現状では、間伐はおろか林業を続けていく事がとても困難であると言える。
温暖化や近年の自然災害の激甚化、頻発化を踏まえた対策としても、
森林環境の持続的管理は喫緊の課題である。
環境保護効果を生む林業をこれ以上衰退させてしまう事は、私たちが生きていく為にも回避すべき問題である。
だが現状では木材需要の量・質的にも限界が見えており、供給元の原価底上げを行う事は困難である。
必要なのは、新たな持続的需要の確立と考える。
例えば、植物繊維素材が既存素材の代替となることができれば、新たな需要を生み出し原価底上げが可能となる。
それこそが森林環境の持続的管理助成し、強いては環境破壊を食い止めることに繋がるのではないだろうか。
画像出典:環境省「木からつくる自然な車 ナノセルロースヴィークルへの挑戦」
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林野庁(https://www.rinya.maff.go.jp/j/kanbatu/suisin/kanbatu.html)
環境省(http://www.rish.kyoto-u.ac.jp/ncv/outline/)
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