東京2020オリンピック・パラリンピックで、マラソンスイミングとトライアスロンの競技が開催されるお台場海浜公園。東京湾に面するこの会場で、国際トライアスロン連合が定める基準値を超える大腸菌が検出された。汚水による選手への影響は悪臭だけではない。水を飲み込み腸内で感染症が発生すれば、ときに出血を伴う下痢や腹痛を引き起こすことがある。到底、安心して競技に集中できる環境とはいえない。
水質汚染について、多くの日本人は自国に深刻な問題はないと捉えていないだろうか。
汚染要因のひとつに、下水処理場の処理能力が挙げられる。好天時には汚水と雨水の下水はすべて処理されて川や海に放流される。一方で、 大雨が降り処理能力を超えると、下水は直接に東京湾へ流れ込む。当然この汚水には生活排水が含まれていて、その割合は7割(*1)にも及ぶ。ここに訴えるのは、設備や仕組みの非ではない。 多くの人がこの深刻な現状を認識せず、汚水を排出しつづけているという根本的な問題がある。
*1 環境省「浄化槽による地域の水環境改善の取組み」より
(グラフ:環境省「浄化槽による地域の水環境改善の取組み」をもとに筆者作成)
排水規制や処理設備の整備など、行政による水質保全対策は強化される。同時に、住民ひとりひとりにも汚水排出を減らす生活行動が求められる。
生活排水の4割(*2)は台所から排水される。調理くずや皿の油汚れなど、何気なく排水溝に流すことはないだろうか。例えば、マヨネーズ大さじ1杯を流せば、魚が住める水質に戻すには300ℓの浴槽に13杯の水が必要だ(*3)。そこに洗剤を使用していれば、さらに値は増す。まずは、料理の無駄をなくす「買いすぎない」「使い切る」「残さない」が、最も身近な水質汚染対策の一歩となる。
*2 環境省「生活排水読本」より
*3 東京都環境局自然環境部水環境課HPより
(出典:環境省, 「生活排水読本 」)
地球環境への関心は、身近な出来事で一気に高まる。 東京2020オリンピック・パラリンピックを機に多くの人の意識が変わるならば、開催後の未来まで日常に定着することを強く願う。それには報道などの情報に対して、一人ひとりが自分事として向き合う姿勢を保たなければならない。安全な水と衛生的な環境を目標のひとつに掲げる SDGsは、すべての国と地域が対象であり、私たちも私たちを守るために例外なく行動が求められる。
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・環境省,「生活排水読本」(https://www.env.go.jp/water/seikatsu/pdf/all.pdf)
・日本経済新聞,「五輪会場の海、水質改善工事へ 都知事が議会で表明」(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52895370T01C19A2CR8000/)
・NHK,「“水質”と“臭い”は改善されるか? 神津島の砂投入」(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200213/k10012279641000.html)
・東京都,「お台場海浜公園における水質等改善の対策について」(https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2019/09/05/08.html)
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