近年、地球温暖化の影響により、勢力の強い台風の上陸でダムに甚大な被害が出ている。局地的な豪雨により山域にて斜面崩壊する事で、ダムには大量の流木が流入する。
以前、台風被害から2か月経っても大量に浮遊するこれらを実際に目の当たりにした際、その被害の大きさを改めて実感させられた事がある。
本レポートでは、ダムへの流木がどのように処理されるかを述べていく。
画像:流木が浮遊する湯西川ダム( 筆者撮影,2015年)
ダムへ自然流入する流木は、各ダムにより毎年ある一定量が測定される。これらは、網場(※)によって堰き止められる。しかし、異常洪水で大量に流入すると、網場を破断してダム堤体近傍まで流出し、一部は下流へと流れてしまう。また、洪水調節をするゲートに流木が挟まり、開閉を操作できなくなった事例(下部)もある。
流木等の陸揚げ、施設の破損などによる施設整備や維持管理等、ダムの管理に大きな負担が積み重なっていく。
(※) あば。ダム等に流入する流木等から、水門や取水設備等を保護し、災害を防ぐ設備。浮きを連ねて網を張ったもの。
画像:ゲートに流木が挟まった裾花ダム
出典:国土交通省, 平成30年, ダム貯水池流木対策の手引き(案)
通常、流木は一般廃棄物として処理される。その回収・処理費用は高額だ。平成23年、紀伊半島を襲った台風12号による約5,500トンもの流木の収集運搬・処理費は約1億9,400万円。この費用をダム管理者が負担するのである。
改善策として、リサイクルが期待される。過去の例を挙げると、矢作ダムにて流木のチップ化などのリサイクルが行われた。全量を廃棄処理する場合と比較して、約4億5,900万円のコスト縮減効果があった。
繰り返される水害被害。平常時を大きく上回る事例が頻発していることから、ダム管理へのリスクは増大し、流木対策の重要性はさらに高まっている。
しかし、日本全国に約3,000基あるすべてのダムにおいて流木がリサイクルされている訳ではない。対応の違いは管理者意識の違いだろうか。国土交通省はガイドラインを発行しようとしている。
リサイクルによって廃棄物の処理を少しでも減らすことで、コストの削減や温室効果ガス排出量の減少に結びつくことは明らかである。
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・国土交通省「ダム貯水池流木対策の手引き(案)」
(https://www.mlit.go.jp/river/shishin_guideline/dam7/pdf/damtyosuichiryubokutaisakutebikiH30.pdf)
・国土交通省「ダム貯水池における流木流入災害の防止対策検討調査報告書」
(https://www.mlit.go.jp/common/000109049.pdf)
・神奈川県ホームページ「ダムに流れ着く流芥の処理について」
( https://www.pref.kanagawa.jp/docs/vh6/cnt/f8018/p1187528.html )
・環境省「廃棄物分野における地球温暖化対策」
(https://www.env.go.jp/council/06earth/y0617-02/mat05.pdf)
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