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環境 2020.06.08

電力システム改革は「完遂」したのか

リサーチの背景

 2020年4月、大手電力会社に『発送電分離』が義務付けられた。これは、送配電部門を別会社化して、発電や小売りの兼業を原則禁じるものである。広域系統運用の拡大、小売りの全面自由化に続き、9年間に渡る『電力システム改革』を完遂したとされるが、その実効性が問われている。再生可能エネルギーの発電事業者として、日本の電力市場の行方を考える。

安定供給を大前提に、求められる中立性

 地域独占の垂直統合体制は、終戦後の成長期に大規模な電源開発と安定供給を可能にした。発電・送配電・小売りの一貫経営から培った管轄地域内の高い系統運用能力は、日本の誇りであっただろう。
 ところが1990年代に急激な円高を受けると、内外価格差から公共料金の高コスト構造に批判が集まり、規制緩和が段階的に始まった。さらに2011年の東日本大震災と東京電力福島第1原子力発電所事故を機に、既存の電力システムの限界が露呈して包括的な改革に至った。代替電源の普及拡大やそれに伴う需給調整、供給範囲の強化には、広域系統運用と新規参入者を公正に結ぶ中立した送配電網が欠かせない。つまり、送配電網を有する大手電力会社は、自社の売電や接続を優先できなくなった。

行為規制と資本関係の矛盾

 大手電力会社から『法的分離』した送配電会社は、両社の人事関係や情報管理を行為規制される。一方で、親会社との資本関係は『持株会社方式』または『発電・小売親会社方式』で維持する。前者はグループ会社の位置づけで他部門と対等な関係に置かれ、後者は子会社の位置づけで影響を受けやすい。
 資本関係が続く限り独立性は担保されず、大手電力会社が優位な構図は続くのか。開放の進行によっては、資本関係を解消する『所有権分離』や、系統運用を独立機関に委ねる『機能分離』へ切り替える選択肢もある。不正を取り締まるには、監視機関も政府からの独立性を保証された立場でなければならない。

画像:法的分離以降の各社の事業形態(経済産業省)

 

まとめ

 電力システム改革は、終わっていない。各送配電会社による今後の運用次第で、事業者への行為規制は厳しくなっていくだろう。しかしながら、不正取引を抑制する監視機関の厳格化ばかりが本質ではない。目を向けるべきはその先の目的である、市場の健全な活発化と再生可能エネルギーを含む分散型電源の拡充である。
 2021年には、需給バランスの調整電源を広域調達・運用する需給調整市場の開設と、託送料金制度の見直しが予定される。送配電網への公平なアクセスで、送電広域化と配電分散化が効率的に進めば電力市場の未来は明るい。

 

 

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参照・引用資料

・経済産業省・資源エネルギー庁, 『エネルギー白書2020』, 2020年6月
  (https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2020pdf/)
・自然エネルギー財団, 『電力システム改革に対する提言』, 2020年5月
  (https://www.renewable-ei.org/activities/reports/20200514.php)

 

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この記事を書いたアナリスト

サティスファクトリー編集部

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