日本女性の社会進出は、高度経済成長期を機に進んだ。今、安倍政権は人口減少・少子高齢化に耐える労働力として、より一層の期待を強めている。同時に、結婚に対する考え方にも大きな変化が見られるようになった。そこで注目されているのが結婚後の“姓”についてである。
日本は先進国で唯一“夫婦同姓”が義務付けられてきたが、“夫婦別姓”を求める動きに対して旧姓を併用する対応が社会に広がりつつある。2019年には住民票やマイナンバーカード、運転免許証の旧姓表記が始まり、これに約100億円が費やされたことは記憶に新しい。しかし、法的制度がない状況は変わらず、旧姓表記の利便性は未だ低い。「女性の活躍」を掲げる日本で働きやすい社会を実現するには、姓の問題にどのように取り組むべきか考察する。
日本では夫婦同姓が義務付けられ、多くの場合に女性が姓を変える。その際、まず名義変更の事務手続きに多くの時間とお金を要し、大きな負担になる。改姓を望まない人は、長年使用してきた姓を離れ、アイデンティティの喪失を強く感じるだろう。また、仕事にも不都合が生じる。会社の同僚や取引先の相手にまで結婚や離婚といったプライバシーが筒抜けになってしまう。研究職であれば、それまでの論文実績の扱いが曖昧になる。こういった事態を避けるために事実婚を選ぶ人も少なくないが、不利益はなくならない。
<事実婚の不利益>
企業では、旧姓使用を受け入れる動きが広がりつつある。それでも、旧姓使用(条件付きも含む)を認めていない企業は50.8%(*1)と半数以上も残る。その内、企業規模が小さいほど、また、所在地が小都市や町村といった小さな地域ほど割合が高い。
企業が旧姓使用を認めるには、2つの姓を管理するシステムの整備コストや人事業務の手間がかかる。中小企業や小都市にとって、これらの負担は重い。さらに、旧姓使用の前例が無い保守的な文化や、女性の発言力の弱さも一つの要因と言える。
(*1)「平成28年度内閣府委託調査 旧姓使用の状況に関する調査」による
選択的夫婦別姓と旧姓使用の制度が天秤にかけられ、法制度の整備はどちらも進まないようだ。結婚後の女性にとって姓をどのように扱われるかは、働きづらさ、逆さにとれば働きやすさに直結する。
早期に選択的夫婦別性の法制度がかなわなくとも、企業はその会社に適した制度(規程やシステム)を構築することで差別化を図る。人材確保と生産性向上は、最大限の費用対効果を生むだろう。働く女性が姓に悩まずキャリアアップを重ねれば、十分に企業に報いるのではないか。
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・男女共同参画局, 「旧姓使用の状況に関する調査」, 平成29年3月 (内閣委託により株式会社インテージリサーチ調査)
http://www.gender.go.jp/research/kenkyu/maidenname_h28_research.html
・ベリーベスト法律事務所, 「日本も夫婦別姓になる日が近い⁈知っておきたい夫婦別姓の9つのこと」, 2018年10月
https://best-legal.jp/couples-surname-9969
・ベリーベスト法律事務所, 「事実婚はメリットだらけ⁈国のルールに縛られない新しいカップルの形」, 2019年7月
https://best-legal.jp/common-law-marriage-merit-14297#i-10
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