飲食店から出る食品ロスについて、最近特に注目度が高くなっています。
今年に入って特にテレビでも取り上げられるようになり、
また、先月末には「食品ロス削減推進法」も成立され、
みなさんも耳にすることが多くなっているのではないでしょうか。
参考記事:「なぜ減らない食品ロス」おはよう日本
そんな飲食店から出る食品ロスの代表とされるのが、
パン屋さんの売れ残りのパンです。
品ぞろえをよくするため、焼き立てを提供するため、など顧客獲得のための営業方法が、
多くの店舗で、結果的に大量の廃棄を生んでしまっているのです。
そんななか、今回取り上げたいのは「廃棄を出さないパン屋さん」 です。
ブーランジェリー・ドリアン
広島県広島市中区八丁堀の実店舗と、南区堀越の工場併設セルフサービス店の2店舗を構える。
国産有機栽培の麦と自然発酵の種で作られたパンを、薪の石窯で焼き上げる。全国発送も受け付けている
「ブーランジェリー・ドリアン」さん、
たびたび「持続可能なパン屋さん」としてメディアにも取り上げられる、話題のお店なのです。
「捨てないパン屋の挑戦 休みも増えて売り上げも維持」朝日新聞
SDGs(持続可能な開発目標)とは、国連の掲げる全世界共通の17の目標です。
一軒のパン屋さんがSDGsとどのように関わっているのでしょうか。
具体的に17の目標に当てはめると、
・2:飢餓をゼロに
・3:すべての人に健康と福祉を
・8:働きがいも経済成長も
・12:つくる責任つかう責任
以上の目標にアプローチしているようにとらえることが出来ます。
今では全国から発注も承る人気店ですが、数年前までは前日夜から寝ずに仕込み作業をして
お店も朝から夕方まで営業し、それでも毎日廃棄を出していたといいます。
ドリアンさんが、注目されるパン屋さんになるまでのきっかけをご紹介したあとに、
現在の経営スタイルが、上記SDGs4つの目標のどれに当てはまるか、
サティスファクトリーの目線でご紹介していきます!
ある日オーナーの田村さんは、外国人の友人にこういわれたといいます。
「パンを捨てるのは、おかしいよ」。
田村さんはその問題を頭では認識しながらも、
「長時間の労働も、廃棄が出ても仕方がない。それが日本のパン屋の普通だから」と思っていました。
しかし、そのような経営スタイルから脱却しようと、ある日思い立ち行動に出ました。
お店を休業し、約一年ヨーロッパに修行に出たのです。
田村さんは、そこで出会ったパン作り、そしてパンそのものの存在に感銘を受けました。
そして日本でも同じようにしてパンを作れないか、試行錯誤を重ねました。
ヨーロッパで目にしたのは、一見手抜きにも見えるパン作り。
日本では当たり前の、二度発酵させるという工程も無い、それでも驚くほどおいしいパン。
さらに食卓ではパンに色々な料理を乗せて食べたり、
硬くなったパンでも工夫をして食べきったりする知恵がたくさんあったのです。
(参考・引用:『捨てないパン屋』, 2018, 田村陽至, 清流出版)
帰国後は、工場設備やスタッフの配置、経理、商品…とあらゆる面を改善させてゆきました。
SDGs
・2:飢餓をゼロに
・3:すべての人に健康と福祉を
原材料は粉、水、塩のみ。
粉は、有機栽培された最高級のものを使い、店内には生産者と栽培方法を掲示しています。
価格が輸入小麦の倍になっても、チーズなどの食材を無くすことで調整しました。
原材料を少なくしたことで、パン自体の賞味期限も伸び、冷蔵保存で2~3週間ほど持つといいます。
休業前は総菜パンなど20数種類ありましたが、2種類(2019年6月現在、限定商品も含め4種類)に。
ヨーロッパで見た製法を再現し、美味しいパン作りへのこだわりは捨てませんでした。
それでも、値段を休業前から変えていないのは、パンは特別ではなく、日常的に食べるものであるからといいます。
だれでも安心して、食べ続けることが出来るパンの完成です。
SDGs
・8:働きがいも経済成長も
スタッフは一時期の8人から、ご夫婦で製造と販売それぞれ一人ずつに。
スタッフにパン作りを丁寧に教える時間も無く、安い給料で雇わざるを得なかったのを、
意を決してご夫婦での経営に変えました。
今は、無給で研修生を受け入れており、元研修生たちは、全国各地に散って活躍されています。
一週間のうち営業日は3日、全国へ発送用のパン作りに2日、仕込みだけの日が1日。
毎日昼には仕事を終えて、午後の時間は自由に使っているそうです。
週休1日ですが、毎年1か月から1か月半の長期休暇をとっているというのは、
働く日本人特に自営業のパン屋さんにとっては、なかなか考えにくいのではないでしょうか。
SDGs
・12:つくる責任つかう責任
販売方法にも工夫がされています。
12時から18時までの営業時間で売り切ることがほとんどだといいますが、
売り切れなかった時は、交流の深い移動販売のお店などに託して、売り切る。
それでも残ったものは、翌日割引して販売しています。
インターネットでの定期販売も始めました。
店内で予約もできますが、今は顔と名前の分かる常連さんのみ、とされています。
売れ残りに繋がってしまう、予約キャンセルへの一つの対策です。詳しくはこちら
このようにしてお店をリニューアルし、パンの廃棄はゼロになりました。
営業日も、働く時間も減りましたが、売り上げは休業前と同じというから驚きです!
ドリアンさんのことを調べていると、居ても立っても居られなくなり、
会社でもパンを注文してしまいました!
しかも欲張って全4種類…。
注文してから、約1週間で到着しました。
1週間のうち、発送用のパン作りは週2日曜日が決まっているため、
注文のタイミングによっては、少し到着まで時間がかかります。
その分、楽しみにしていたパンが会社に届きワクワク!
ダンボールから、パンの香ばしい香りが漂ってきました。
実際にパンを食べてみると・・・
・香りがすごくいい
・食べ応えがある
・カンパーニュは、中にチーズが入っているような酸味がある(チーズ愛好家社員)
・バターや卵をのせて食べても美味しそう
・外はカリカリで中はもちもちしている
など、様々な感想が聞けました。
トースターや、ジャムなどはなかったのですが、それでもとても香ばしく美味しかったです。
2週間ほど保存できるそうなので、まだ残っている分は冷蔵庫に置いて、
今週末に食べる予定です。
出来立てよりも、数日置くとより味に深みがでるそうなので、今から楽しみです。
上で見てきたとおり、ドリアンさんの取り組みはSDGsに関連が深いようです。
しかしドリアンさんの場合は、
「SDGsが話題だから、取り組みはじめました。」というモチベーションで始めたのではなく、
「おいしいパンを届けたい、丹精込めたパンを捨てたくない、働きづめを解消したい」
という思いから取り組み始めたような印象を受けます。
ヨーロッパ修行中に目にした働き方やパン作りに感銘を受け、
日本でも同じことが出来ないかと、
ご自身のお店で実験として取り組んでいるといいます。
ドリアンさんが持続していくための工夫が、SDGsにも関わっていて最近特に注目されはじめた、
と表現した方が正しいかもしれません。
SDGsは「持続可能な開発目標」と訳されますが
全ての組織が持続するための具体的な方法・工夫は、一緒ではないはず。
SDGsは、言ってしまえば国連が定めた共通の目標です。
17の目標を達成しただけでは、理想的な持続可能な社会にはなり得ません。
ご自身が所属する組織の持続するための工夫が、SDGsにも繋がっているならば
持続可能な開発のゴールに一歩近づくのではないでしょうか。
なぜ減らない食品ロス,NHKおはよう日本2019年2月16日,
フミの置き手紙, 捨てないパン屋は旅するパン屋のブログ, 2019年1月20日
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