格差が小さく飽食の日本でも、近年、貧困が「健康の格差」につながる要因であることが明らかになってきました。
所得が少ない人は、所得が多い人より死亡リスクが2倍近く高いという報告があります。
このような健康の格差が広がる背景には何があるのでしょうか?
日本の貧困は、毎日の衣食住に事欠き、生きるための必要最低限の生活ができない『絶対的貧困』とは異なり、
可処分所得が年間122万円以下の『相対的貧困』を指します。
毎月約10万円で日々の生活を送る計算です。
相対的貧困は目に見えづらく、その最たるものが「子どもの貧困」です
現代の日本では子どもの7人に1人が貧困とされて、その与える影響が深刻になっています。
相対的貧困は、一般的に「子どもの教育の機会を奪う」といったイメージが先行しがちですが、
子どもが胎児期や幼少期に親の貧困が原因で低栄養状態の状況にさらされると、
健康への悪影響は長期におよびます。
価格の安い食事は、満腹感も得やすい米やパン、インスタントラーメンなどの炭水化物が占めて、
野菜や肉類の摂取量が不足します。
さらに経済的な理由から、病気にかかっても病院に行けず、重篤化するケースも増えています。
海外の研究では、幼少期に家庭の経済状況が悪いと、
大人になってからの心臓病や脳卒中 、肺がん、胃がん などの 死亡率が高いことがわかっています。
つまり、子供の貧困は、人生のスタートラインから健康の格差が始まっているようなものなのです。
現在多くの研究で貧困と健康問題との関連性が認められています。
日本では「健康問題は自己責任」との風潮が強いため、国や自治体などの公的対策を強く求める声が上がりません。
抜け出すことの難しい貧困は、自助努力では解決できないばかりか、健康問題にも大きく関係しているため、
放置すれば経済への影響も大きく、社会全体の損失にもつながります。
とりわけ子どもの貧困を放置することで社会損失は42兆9000億円にのぼるとされています。
(日本財団/子どもの貧困対策チーム/(2016)調べ;0~15歳の子ども約1760万人の貧困を放置した場合の社会的損失)
SDGsでは、2030年までにあらゆる形態の貧困に終止符を打つという大胆なコミットメントをしています。
これは海外の問題ではなく、私たちの身近な貧困問題も含んだものです。
日本の場合、将来の貧困問題の根本を断つ意味でも、まずは子どもの貧困から解決に向けた努力を始めていくことが必要です。
日本は先進国の中でも子どもの貧困率が高いことを認識して、社会全体が今、目を向けていく必要があります。
少子高齢化が叫ばれる日本でこそ、相対的貧困の現実を正しく知ることが重要です。
未来のために私たちができることを探り、国や自治体に働き掛けることで、具体的な貧困に対する社会政策を求めて行かなくてはなりません。
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WHO Centre for Urban Health. Social determinants of health. The solid facts [Internet]. 2nd ed. Wilkinson R, Marmot M, editors. Copenhagen: World Health Organization; 2003. [not revised; cited 29 Dec 2017].
OECD(2014)Family database Child poverty
現代社会の階層化の機構理解と格差の制御:社会科学と健康科学の融合(略称「社会階層と健康」)
日本財団子どもの貧困対策チーム(2016)『徹底調査 子供の貧困が日本を滅ぼす 社会的損失40兆円の衝撃』
HUFFPOST 子どもの貧困の放置で生まれる社会的損失は40兆円「投資の視点」で対策より
日本財団:子どもの貧困の社会的損失推計レポート2015より
一般財団法人プライマリケア:健康格差の現状分析とその生成プロセスレポートより
平成28年国民生活基礎調査 平成27年の貧困率
UNICEF Innocenti Research Centre, Report Card 10 Measuring child poverty 2012
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