2019年、旅行で香川県を訪れた。その際立ち寄った直島と小豆島。各島の独自性に感動を覚えた。「島」というと過疎化、少子高齢化など社会的な問題が取り上げられる事が多い。だが、私が訪れた島々は、まるでそれらの問題を克服したかのような輝きを放っていた。なぜ発展することができたのか。島の歴史とともにその要因について考察する。
平成30年推計人口から見る対前年の人口増減率では、埼玉・千葉・東京・神奈川・愛知・沖縄の1都5県を除いた道府県はいずれもマイナスという結果だった。日本全体が、特に「地方」と呼ばれる地域での人口減少が著しい事が分かる。
このままでは地方の多くが消滅し、日本全体が衰退する恐れがある。それを食い止めるために、まずは地方の創生が不可欠である。だが、一時的な創生では意味がない。日本の存続のために「持続可能な」まちづくりが今求められている。
いまでは「アートの島」と呼ばれる直島と豊島。この2つの島はかつて製錬所による煙害、有害産業廃棄物の不法投棄という問題を抱えていた。この負のイメージから脱却を図り、まずは直島がアートと自然との融合を目指した。さらに、備讃瀬戸という広域で地域活性化を図った2010年の瀬戸内国際芸術祭開催が大きな起点となる。これを機に、豊島も美術館の設置や棚田の再生を行った。これらの活動が実を結び、2019年までの県外観光客入込数は7年連続で900万人を超える結果となった。中でも、直島町の観光入込客数は1990年から2018年までで約48倍、2018年度の移住者数は前年比16%増の92人である。この復活劇の最大の要因は、一見ミスマッチに思える「地域環境・自然・現代アート」の3要素を最大限に活かし、独自の融合性を生みだしたことにある。それが島の歴史や土地への強い関心に繋がり、多くの人を魅了している。
画像出典: 香川県HP「摘発直後の豊島処分地」
直島・豊島の発展は、「環境・経済・社会」の価値創造を果たした地方創生の成功例である。例えば廃屋の再利用、棚田の再生は環境価値を、イベント開催時だけでなく通年観光客が訪れる島独自の工夫が経済的価値を創造している。そして社会的には、アートを通じ島外の人々が島の歴史や文化に興味を持つ、また住民が自身の島の魅力を再認識する事が価値創造に繋がっている。これらに地域が本来持っている環境的・歴史的資産を融合させ、固有性を生みだす。ここに日本の地方創生のヒントがあるのではないだろうか。
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