1980年代、先進国からアフリカをはじめとする開発途上国に輸出された有害廃棄物により、開発途上国において発生する環境汚染及び健康被害が発生していました。そこで、経済協力開発機構(OECD)及び国連環境計画(UNEP)において検討が行われ、1989年3月にスイスのバーゼルにおいて一定の有害廃棄物の国境を越える移動等の規制について国際的な枠組み及び手続き等を規定した、有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約(以下、「バーゼル条約」)が採択され、1992年5月に発効しました。
1)国境を越える廃棄物の移動について
・廃棄物の輸出には、輸入国の書面による同意が必要。
・廃棄物の不法取引は犯罪性のあるものと認め、条約に違反する行為を防止すると共に、処罰するための措置をとる。
・廃棄物の運搬及び処分は、許可された者のみが行うことが出来る。
・廃棄物の移動には、条約の定める適切な移動書類の添付が必要。
2)国際協力
・廃棄物の処理を環境上適正な方法で行うため、主として開発途上国に対して技術上その他の国際協力を行う。
1992年5月のバーゼル条約の発効を受け、日本ではバーゼル条約を担保するため1992年12月に「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律」(以下、「バーゼル法」)が制定されました。日本における特定有害廃棄物等の輸出入承認等に関する手続きはこのバーゼル法及び関連法令により定められています。
環境省及び経済産業省は、毎年バーゼル法の施行状況について集計を行っています。直近の2019年1月~12月の実績は以下の通りでした。
1)輸出
件数: 172件
数量: 103,528t
品目: 石炭灰、錫鉛くず等
主な相手国: 韓国、ベルギー
2)輸入
件数: 312件
数量: 6,685t
品目: 電子部品・電池スクラップ、金属含有スラッジ等
主な相手国: インドネシア、フィリピン、タイ
2年毎にバーゼル条約を批准する国々により締約国会議(COP)が開催されることになっています。COPは現在までに12回開催され、次回は2021年5月に開催予定されています。
開催時期 | 開催地域 | 内容 | |
第1回 | 1992年12月 | ピリアポリス | 環境上適正な処理のガイドラインの採択 |
第2回 | 1994年3月 | ジュネーブ | 先進国から途上国への有害廃棄物の輸出禁止の決定 |
第3回 | 1995年9月 | ジュネーブ | 先進国から途上国への有害廃棄物の輸出禁止の条約改正(BAN改正) |
第4回 | 1998年2月 | クチン | 廃棄物リストの採択(新附属書 VIII及び IX),附属書 VII(途上国へ廃棄物の輸出が禁止される国のリスト)を発効まで改正しない決定 |
第5回 | 1999年12月 | バーゼル | 損害賠償責任議定書の採択,環境上適正な管理に関するバーゼル宣言の採択 |
第6回 | 2002年12月 | ジュネーブ | 遵守メカニズムの採択及び遵守委員会の設立の決定 |
第7回 | 2004年10月 | ジュネーブ | 残留性有機汚染物質(POPs)技術ガイドラインの採択 |
第8回 | 2006年11月 | ナイロビ | 電気・電子機器廃棄物(E-Waste)問題解決に向けてのナイロビ宣言の採択 |
第9回 | 2008年6月 | バリ | 人の健康と生活のための廃棄物管理に関するバリ宣言の採択 |
第10回 | 2011年10月 | カルタヘナ | BAN改正発効要件に合意,廃棄物の最小限化などに関するカルタヘナ宣言の採択 |
第11回 | 2013年5月 | ジュネーブ | 有害廃棄物等の環境上適正な管理に関するフレームワークの採択 |
第12回 | 2015年5月 | ジュネーブ | E-Waste及び使用済み電気電子機器の越境移動に関する技術ガイドラインの暫定採択 |
第13回 | 2017年4~5月 | ジュネーブ | E-Waste及び使用済み電気電子機器の越境移動に関する技術ガイドライン検討のための専門家作業グループ設置の決定,PCB廃棄物ガイドライン改訂版の採択 |
第14回 | 2019年4~5月 | ジュネーブ | バーゼル条約の規制対象物資への「汚れたプラスチックごみ」の追加,ロッテルダム及びストックホルム条約への規制物質の追加の採択 |
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2019年4月から5月にかけてスイスジュネーヴで開催された第14回COPでは近年世界的な環境問題として取り上げられる「汚れたプラスチックごみ」が規制対象物資に追加されました。次回のコラムではこの「汚れたプラスチック」についてご紹介する予定です。どうぞお楽しみに。
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