サティスファクトリーが提供する専修大学の寄付講座「SDGs に向けたリーダー養成」(全14 回)は、SDGs の観点で社会課題解決を図るリーダーを育成することを到達目標に2023 年に開講されました。本講座の責任教員は経済学部の遠山浩教授がつとめ、その他専門家講師によるオムニバス講義となります。
第3 回目の講義では、経済ジャーナリストの磯山友幸氏をお招きし、講義「ESG投資と日本社会~なぜ企業はSDGs に本腰を入れるのか~」を行い、サティスファクトリー代表の小松武司が対談しました。
磯山友幸氏
早稲田大学政治経済学部卒業後、日本経済新聞に入社。証券部記者を務めた後、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、日経ビジネス副編集長など要職を歴任し、2011 年に経済ジャーナリストとして独立。
現在、経済政策を中心に政・財・官を幅広く取材しながら、「FACTA 」、「WEDGE 」、「現代ビジネス」等で執筆活動を行っている。熊本学園大学招聘教授、早稲田大学客員上級研究員、上智大学非常勤講師なども務めている。著書は、『ブランド王国スイスの秘密』(日経BP 社)、『国際会計基準戦争』(日経BP 社)など。
経済成長と社会的な持続可能性を結びつける
SDGs(持続可能な開発目標)は、2015 年の国連サミットで採択され、ほとんどの国連加盟国が2030 年までに達成すべき目標を設定しました。日本でもSDGs に対する関心が高まっており、政府も積極的に取り組んでいます。
SDGsの前にはMDGsMDGs(ミレニアム開発目標)が2000 年から2015 年まで実施されましたが、それに比べてSDGs は広く認識されています。SDGs の目的は、環境問題だけでなく、経済成長と社会的な持続可能性を結びつけることで、世界のさまざまな社会問題に対処することです。
SDGsの中で特に重要な点は、「Decent Work and Economic Growth 」の目標です。経済成長は持続可能であるべきであり、過度な働き方ではなく働きがいのある人間らしい仕事によるものであるべきなのです。
SDGsは新たなビジネス機会を生み出す手段
今、多くの企業がSDGs に取り組む理由はいくつかあります。まず、企業は社会的な期待と評価を高め、顧客や投資家からの支持を得なければなりません。SDGs に取り組むことは新たなビジネス機会を生み出す手段であり、企業は環境に配慮した製品やサービスを提供し、社会的な課題に対する解決策を提供することで市場競争力を高めることができます。
会社の目的は利益を上げることであり、これは株式会社の本質的な特徴です。しかし、最近では社会的な観点から利益追求だけでなく、ステークホルダー全体の利益を考慮する必要があるとの議論が広まっています。これは、利益だけを追求することが社会的に望ましくないという認識から生まれたもので、企業は利害関係者、従業員、近隣住民などに迷惑をかけず、むしろ彼らに利益をもたらすようなビジネスモデルを追求すべきだとされています。
企業は利益を上げつつ、社会的な価値を創出し、公平に分配することを目指すべきであり、利益は社会全体に貢献し、年金などの社会的な制度の原資となる重要な要素となります。
一方で、不正行為や非倫理的な慣行が存在し、これに対処することも必要です。社会の中で適正な生き方を選ぶことが、SDGs やESG 問題の結論として重要です。
外国からの資金を日本経済に導入する必要性
岸田総理は、日本企業の国際競争力を向上させるため、資産運用特区の設立や外国からの投資を奨励する演説を行い、日本への投資機会を訴えました。また、ESG に基づく政策や資産所得倍増プランについても、日本政府が経済改革を進めていることを言及しました。しかし、現状、日本の通貨価値は下落し、株価が上がっても実体価値は上がっていません。
日本が通貨価値の下落を防ぐためには、外国からの投資を奨励し、外国からの資金を日本経済に導入する必要があると主張しています。これにより、日本経済は成長し、通貨価値が安定する可能性があるとされています。
今、日本に問われているESG とは
今、日本に問われているものの1つにダイバーシティが挙げられます。
ダイバーシティはESG の一部であり、多様性が経済成長に寄与します。特に、女性の組織への参加が重要です。
例えば、Canon は、女性取締役の不在に株主からの圧力を受け、女性取締役を採用することを決定しました。企業がダイバーシティを尊重し、取締役会や組織に多様性を取り入れる必要性を示唆しています。
また、岸田内閣では、女性閣僚を増やすことに取り組み、これもESG の一環とされています。ただし、副大臣や政務官のポジションに女性がいないことも指摘されています。
このように、ESG への取り組みが企業や組織にとって重要であることが強調され、環境、社会、ガバナンスの観点から持続可能なビジネスを展開する必要性が高まっています。
SDGsに通ずる日本の伝統的な倫理観
そもそもSDGs は日本の伝統的な倫理観に通じます。
多くの経営者に影響を与えた二宮尊徳は、道徳と経済の一円融合を提唱し、道徳的な行動と経済成長を結びつける考え方を示しました。彼の教えは、経済活動における道徳的な行動の重要性を強調しています。二宮尊徳の教えや、その影響を受けた日本の経営者は、経済活動においても他者を思いやり、社会全体に貢献することを強調し、利益だけでなく、社会への貢献や他者の幸福も追求する生き方を実践してきました。このアプローチは、SDGs の原則と共通するのです。
個人の幸せが他者の幸せや社会全体の幸せと結びつき、他者を思いやり、社会を良くすることが自己の幸福につながります。「あなた自身がどう生きるのか」ということが個人においても社会においても大事であるということを強く伝えたいと思います。
(左から 遠山浩教授、磯山友幸先生、小松武司)
学生の声
SDGsについてゼミで文献や民間企業、民間団体のかたとワークショップを行ったり、これまで受講してきた講義でも何度も学んできたが、なぜSDGs に力を入れるのかについて知らなかったのでとてもいい機会になりました。
これからは自分の利益だけではなく他人を思いやることも大切で、社会全体を考え、今を変えていく必要があります。私も今回の授業で考え方が少し変わり、社会問題の解決のために何かできることを探してみようと思いました。
あとがき
社会問題を自分事として捉えてもらうためにはSDGs やESG 投資といったキーワードの背景を正しく理解している必要があります。こうした理解を促し、講座全体を自分事として捉えてもらいたいという思いで、今回の講義をつくりました。学生にとって、サステナビリティを正しく捉え直す良い機会になったと感じます。
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