廃棄物は、そのまま全て埋め立て処分をされたり焼却されているわけではありません。
一部はリサイクルされ、エネルギー化や再資源化が行われています。
今回は世界と日本の廃棄物リサイクル事情について取り上げます。
上のグラフは、OECD加盟国(ヨーロッパを中心に、アメリカ、日本を含む35か国の先進国が加盟する国際機関)のうち34ヵ国のリサイクル率を比較したものです。
日本の「リサイクルと堆肥」の割合は、全体の2割以下で、ランキングでは下から5番目に位置する値です。
一方で、「焼却とエネルギー回収」については7割以上と、他国を引き離して1位となっています。
なぜ日本では「リサイクルと堆肥」の割合がこれほど低いのでしょうか。
そもそもリサイクル率はどう計算されているのでしょうか。
リサイクル率の一般的な定義は、以下の通りです。
リサイクル率:「リサイクルされた物の量」÷「もともとあった廃棄物などの総量」
「もともとあった廃棄物などの総量」の値の出し方は、EUにおいては以下の4つの定義に分かれています。
①缶、びん、ペットボトルなどの主要な家庭系資源ごみだけの場合
②その他の家庭系資源ごみ(例:生ごみ)を含む場合 <①+生ごみなど>
③家庭ごみ全体の場合 <②+その他の家庭ごみ>
④家庭ごみと事業系ごみを含む場合 <③+事業系ごみ>
EUの多くの国では②と④が、日本では④を採用しています。
さらには、この4つ定義の中でも、
以下のように、どの段階のごみの量をカウントするかによっても差が生じます。
A)廃棄物の発生量
B)廃棄物を排出(搬出)した量
C)廃棄物がリサイクル施設に入った量
〈例〉
日本...「リサイクルされたモノの量」/④-B
A国...「リサイクルされたモノの量」/②-C
「リサイクルされたモノの量」については、以下の数量を含むかによって数値は大きく変わります。
・サーマルリサイクルを含むか否か
・「リサイクル施設に入った量=リサイクル量」とカウントするかどうか
4つの定義やどの段階での量をカウントするかは決まりがありません。
国によって異なるため、基本的にここで計算された数値だけを見て比べることは、正確な判断材料にはなりません。
サーマルリサイクルとは、「エネルギー回収」ともよばれ、熱や蒸気などとして回収することです。
日本では、発電や施設の暖房、周辺施設への温水供給などに使われています。
サーマルリサイクルは国の統計の一般廃棄物のリサイクル率には反映されてません。
反映されれば、日本のリサイクル率は19%に71%が足された90%と圧倒的な数値になります。
しかし、サーマルリサイクルがリサイクル率としてカウントされた場合には、再利用出来るものも無差別に焼却してしまう可能性も含んでいます。
また、その他のリサイクルとして「マテリアルリサイクル」、「ケミカルリサイクル」という処理があります。
マテリアルリサイクル:くずや使用済み製品を、原料として再利用するリサイクル
ケミカルリサイクル:使用済みの資源を化学反応により組成変換した後に行うリサイクル
国が目標値を掲げて、リサイクルを進めているのもあり、資源リサイクルの量は年々増加しています。
最終処分(埋め立て)量は減少しているものの、それでも年間1,900万トン(1分あたり36トン)が埋め立てられています。
分野・対象品ごとにリサイクル状況は異なりますが、今回は2つをピックアップします。
・食品廃棄物
食品廃棄物:食品の製造・加工・流通・消費などの際に廃棄される食品の総称
飼料・肥料への再生利用や、熱・電気に転換するためのエネルギーとして利用できる可能性がある。
食品循環資源の再生利用などの促進に関する法律により、その活用が推進されている。
・建設廃棄物
建設廃棄物:建設副産物(建設工事に伴い副次的に得られたすべての物品)のうち、廃棄物処理法第2条1項に規定する廃棄物に該当するもの。
リサイクル率は小さい。一定規模以上の工事は、再資源化などが義務付けられている。
全体のうち、コンクリート塊、アスファルト・コンクリート塊、建設発生木材が約8割。この3品目の再資源化が推進されている。
分野・対象品ごとのリサイクル状況について気になった方はこちらもご参照下さい。
サーマルリサイクルを除いたリサイクル率を上げるためには、リサイクル施設に費用を割く体制が必要となります。
また、体制を整えるためには消費者の協力も必須となります。
容易な道ではありませんが、限りある資源を次世代につなげていくためには必要なことではないでしょうか。
今回は日本のリサイクルの現状について焦点を当てました。
次回は廃棄物リサイクルの経緯を含めた、日本の廃棄物の歴史についてお伝え致します。
国立環境研究所「知って欲しい、リサイクルとごみのこと」
Teach Note「廃棄物の発生とリサイクルの現状」
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