年の瀬も近づいていますが、みなさん年末の大掃除はお済みでしょうか?
大掃除の際に着ない洋服などをを捨てて整理をした方も多いかもしれません。
今回の記事はそんな「衣類の廃棄」について取り上げていきます。
日本全体でどれくらいの衣類が捨てられ、どのように処分されているのでしょうか?
(見出し画像出典: BBC, "Hugh’s War on Waste"、2016)
現在、日本における衣類廃棄量は、年間約100万トン(※)にもなっています。
枚数に換算すると、なんと33億着。
その衣類の半分以上は焼却処分されおり、
日本の衣類のリユース(再び衣類として使用すること)率の低さが指摘されています。
(※独立行政法人 中小企業基盤整備機構調べ)
ではなぜ、こんなにも衣類が廃棄されてしまっているのでしょうか ?
①ファストファッションの流行
ファストファッションとは、最新の流行のスタイルを低価格に抑えた衣料品を、
短いサイクルで大量生産・販売する業態のことです。
近年、日本でもファストファッションが流行り、消費者は安く大量に流行の衣類を購入できるようになりました。
数回しか着ていない衣類でも、飽きたらすぐに捨ててしまうというようなケースも増えました。
②トレンドの細分化
ファッション業界のトレンドや消費者の好みが細分化したことで、衣類の種類自体が増えているといわれています。
そのため「機会ロス」を逃したくないアパレル企業は、欠品になることのないよう十分な量の衣類を生産します。
その結果、売れ残ってしまった商品については、廃棄されてしまいます。
③返品在庫の再販不可
試着の際に使われた商品などは売れ残ってしまうことが多く、
それらの商品はアパレル店舗からメーカーに返品されることになります。
これらは、たとえきれいな状態であっても、新品として再出荷することは難しく、多くが廃棄されてしまいます。
廃棄された衣類はすべて焼却処分されているわけではなく、一部リサイクルも行われています。
衣類のリサイクル方法は、
・主に衣類を繊維の状態に戻す
・断熱材などの他の用途のものに再利用する
といったものがあります。
しかし、廃棄される衣類は繊維にしたり、断熱材にするのがもったいないような、
まだ着ることができる状態の「きれいな服」であることがほとんどです。
そのため、多くのアパレル企業は、そうしたまだ着用できる「きれいな服」を
そのまま古着として販売する「リウェア」や「リユース」に力を入れるようになっています。
アパレル企業の活動として、「衣料品引き取りキャンペーン」があります。
店頭で不要になった衣料品を回収し、国内外での再利用やリサイクルに回すという活動です。
衣料品の引き取り時に、割引クーポンを発行しているところもあります。
現在この「衣料品引き取りキャンペーン」を行っているのは、
洋服の青山、AOKI、ユニクロ、GU、H &M、無印良品、マルイ、イオンなどの店舗です。
また、衣類を発展途上国に寄付できるNGO・NPOもあります。
詳しくはこちら:「いらなくなった服でちょっといいこと!寄付&リサイクル」
店舗の衣料品引き取りキャンペーンが浸透し、
「まだ使える服」がリユース、リサイクルで再活用されるのは良いことと言えます。
しかし一方で、古着は国外で流通するケースが多々あり、
輸出や販売、また現地での廃棄にあたって多大な環境負荷をかけているという面があります。
わざわざ国外まで運ぶ前に、日本国内で衣服不足で困っている人の手元に
衣類が行き届くことも大切ではないでしょうか。
実際に、国内では着る服に困っている人たちが存在しています。
例えば、貧困状況にあったり、さまざまな理由で衣服にお金をかけられない世帯があります。
実際に、「子どもの貧困対策センター 公益財団法人あすのば」の2017年の調査※によれば、
貧困世帯の52%もの子どもが、経済的な理由で「洋服や靴、おしゃれ用品などを我慢した」経験があると答えています。
日々の食事や住居、学用品などが優先され、新しい衣類を買う余裕がないという声が国内でも聞かれます。
一方で、アパレル企業からは日々大量の「新品の衣類」が売れ残りなどの理由で廃棄されています。
当社では、アパレル企業で発生してしまった不良在庫の新品衣類を、
都内の児童保護施設に寄付した実績があります。
新品かつおしゃれなデザインの洋服が届き、施設の方やお子さん達も喜ばれたと伺っています。
また企業にとっては、意図せず生じてしまった所品在庫を廃棄することなく
必要なところにお渡しすることができたことに大変満足されていました。
(出典: 公益財団法人あすのば,「 子どもの生活と声 1500 人アンケート」, 2018年)
アパレル企業が出る廃棄は、衣服などの製品に限りません。
例えば、デザイン時に必ず必要となる「スワッチ」と呼ばれるサンプル布生地見本。
葉書大からB5ぐらいの大きさで、台紙に生地見本が貼り付けてあるものです。
シーズンが過ぎれば、大量のスワッチの廃棄が出ます。
小~中規模のデザインスタジオからも、1シーズンで70Lごみ袋で30~50袋程度の廃棄が発生してしまいます。
当社では、このスワッチの布生地をアパレル企業から預かり、
子そもたちの教育教材として活用しました。
スワッチのサンプル生地は、かわいい花柄もあればクールな光沢のある生地まで様々。
これをヘアアクセサリーの飾り部分に使い、
子どもたちが自分の手で楽しみながら工作をすることができました。
また、ワークショップを通じて
本来「ごみ」になってしまうものを「価値あるもの」に変えることを体験してもらい、
ごみに対する価値観、環境に対する考え方を深めてもらうことをねらいとしています。
上記がその一例ですが、当社では2016年より
発生してしまった「ごみ」を廃棄せず、工作を通じてアップサイクルすることで
新しい価値を生み出す活動"eduCycle”を行っています。
(写真: 2020年1月 eduCycleワークショップ風景)
以上、事例をみながら衣類廃棄の現状と減らすための取組みをご紹介しました。
大量の衣類廃棄は根深い問題です。
この問題を解決するには、発生したものをごみにしない工夫をするだけでなく、
根本的な流通方法や人々の意識も変えていく必要があるでしょう。
衣類の廃棄を減らすことは、そのままごみ量を減らすことにつながります。
ごみを減らすべき3つの主な理由は、
・限りある天然資源を有効活用するため
・処分施設及び最終処分場の延命、維持管理コスト低減のため
・焼却処分量が減れば地球温暖化の原因となる二酸化炭素等の排出量が削減されるため
といえます。
「衣類廃棄量は年間約100万トン!アパレル業界が注目するリユースとは?」
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